
4人組ロックバンド「クリープハイプ」のボーカル・ギターを担当している尾崎世界観。
彼のエッセイを読めて良かった!
私はクリープハイプが好きだ。
何が好きって、演奏や曲のメロディはもちろんのこと、尾崎さんの書く詩が好きだ。
決して綺麗ごとばかりではなくて、生きていく中で感じる焦燥感だったり、孤独感だったり、誰とも分け合えないような日常の、細やかで気にしなければ忘れてしまいそうな複雑な感情や出来事を詩で表してしまう。
自分がうまく言葉にできないことを尾崎さんは独特な言い回しで表現してくれる。
どうしてあんな詩が書けるのだろう、あの言い回しはどうやって生まれてくるんだろう。
彼は普段どんなことを考えて、生きているんだろう。
この本を読んで、それが少し覗けたような気がする。
泣きたくなるほど嬉しい日々に、尾崎世界観の自己啓発本ならぬ事故啓発本を読んで、また彼の魅力に触れてしまいました。
印象に残った話
どの話も面白かった、「尾崎さん、よいしょよいしょで大事な場面があるじゃないですか」では昔組んでいたバンドメンバーの話があって、最後にはなんとも言えない切ない気持ちになってしまったし、徹子の部屋が終わるタイミングでフィニッシュを迎える話には笑わせてもらった。
その中でも特に印象に残ったのは「共感なんてただの痛み止め」の話。
眠れない夜、自分だけが感じていると思う不安や焦りを見ず知らずの誰かが同じように持て余してるのを知った時は、安心して胸のつかえが取れたりしますよ。
泣きたくなるほど嬉しい日々に/116ページより
この一文を読んで、「あー分かるぅ、すっごい分かるぅ、さすが尾崎さんめっちゃ共感できるぅ」なんて思った。
不安になった時、安心を手に入れるには、誰かに意見を聞くのが手っ取り早い方法だ。
例えば「似合う、似合わない」。
「似合う」は他人が決める、誰かに「それ似合ってるよ」と言われれば安心してしまうし、その言葉に合わせにいってしまう。
本来であれば、自分が選んだものが似合うのに。
自分で真っ先に「似合わない」ものを潰していく。
「似合う」より「似合わない」を意識して選ぶのは寂しい。
この話を読んで成功より、失敗しないことに意識を持っていってる自分に気づいた。
服や仕事選びもそう、とにかく失敗しない無難なものを選んでた。
それが当たり前で、当然だと思っていたからそれに疑問を持つことさえしなかった。
だから私は些細なことでもすぐにストレスが溜まってしまうのだろうか?
本当に欲しいものではなく、他人が認めてくれそうな無難なものを自分でも気づかないうちに選び続けていたから。
私はできるだけ共感したいし、共感されたい人間だ。
でも、この話を読んでそれだけじゃいけない気がした。
感想とまとめ
先ほども書いた通り、私は共感人間なので、この本に散りばめられている尾崎さんの感情に共感できるところを探して、それが一致しては喜んでいた。
特に電話を切るタイミング、鍵を閉める時の音の大きさと速さ。
そしてアンコールがあるのに最後の曲で掻き鳴らす白々しさ。
クリープハイプのライブでアンコールをやらなくなった理由がハッキリして、スッキリできた。
そして共感を探す一方で思ったのは、尾崎さんは究極に生きにくそうな人だなってこと。
私も生きにくい性格だと思っていたけど、尾崎さんはそれを遥かに超えているんじゃないかな、と…!
すごく細かなところまで気になって、それに疲れて、その繰り返しで。
だけど尾崎さんのすごいところは、そこで感じた怒りや虚しさを放置したり有耶無耶にせずに、それを溜めこんで音楽や文章にぶつけて、自己表現しているところ。
自分だったらどうだろう、些細なところで感じた怒りなんかは忘れようと必死になってしまうだろうか。
それか共感してもらおうとして、すぐに誰かと分け合おうとするのかな。
すぐに楽な選択肢を選んでしまうんだろうな。
この本はクリープハイプ好きな人はもちろん、細かなことが気になって生きづらい人にもぜひ読んでもらいたいです。
たくさんの共感と、気づきが詰まった一冊になっています。
今度は「バンド」も買って読まなきゃ!
それでは、また次の記事でお会いしましょう、バイバイ!
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